彩の間

芸人ハローワーク〜声優偏〜

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芸人ハローワーク〜声優偏〜

「将来、何の仕事をしようかな…」
ここは、そんな進路に悩める学生諸君のための職業相談所。

以前、別の職業に就職していた芸人へインタビューを行い、
辞めた人だからこそわかるその職業のなり方、成功の秘訣などを紹介します!

今回の職業は「声優」
ということで、元声優のやさしいズ・佐伯元輝さんに話をうかがいました。

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———今日はよろしくお願いします。

佐伯:よろしくお願いします。

———まず声優を目指したきっかけは?

佐伯:ちっちゃい頃からアニメとかが好きなのはもちろんなんですけど、声優さんがラジオとかもやってて、ラジオも好きだったというのもあって。ラジオもおもしろいものですし、アニメもおもしろいものなんで、「そこに携われたら楽しいんじゃないか」というのもあって志しましたね。

———具体的にはどんなアニメが好きだったんですか?

佐伯:やっぱりちっちゃい頃から観てたドラえもんなんかは…「帰ってきたドラえもん」っていう映画がものすごく好きなんですけど、僕、すぐに泣くんです。泣くのはやっぱりストレス解消でいいと思って。「帰ってきたドラえもん」に関しては、テレビの「感動するアニメ作品ランキング」みたいな番組であらすじを聞いただけで、ワイプの柴田理恵さんより早く泣いてますから。相当です(笑)

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———目指そうと思ったのは何歳ぐらいなんですか?

佐伯:でも…高校卒業して3年間、普通に就職したんですよ。建築会社で。で、建築会社で働いてる時に図面を打ち込むんですよ、パソコンに。毎日深夜まで作業して朝早く会社行って、「この仕事どれだけ繰り返すんだろう俺は。何も変わんない、パソコンの前から」と思って。で、ある日、急に目の前にある紙の図面に、ツバを吐きかけたんですよ。

———えーっ?(笑)

佐伯:無意識に。一切記憶が無いですよ。「ツバ吐いた!」っていう時に目が覚めて「あっ!…あっ?…あれ?………辞めよう。仕事は向いてない」って(笑)でも3年間働いてる時の唯一の支えがアニメだったり、ラジオだったりで。「支えられたからやってみよう」って。…正直、今考えたらちっちゃい頃からもっとなりたかったお笑いから逃げて声優になったんでしょうね。
芸人のほうがやりたかったんですけど、やっぱり怖かったんでしょうね。一番なりたいものを目指すっていうのが。結果、逃げて声優になったっていう。でも好きだったんですよ!もちろん。

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最終的に図面にツバを吐きかけてしまうほどサイコじみていた彼を支えていたのはアニメDVD。実家にあるDVDの数はなんと100本を越えるという。

———どんな作品を買ってたんですか?

佐伯:「涼宮ハルヒ」ってあったじゃないですか?すごい流行ったアニメなんですけど、それを作った会社が「京都アニメーション」っていう会社で、そこが「AIR」っていう、言ったらパソコンのゲームをアニメにしたもので。たぶん「AIR」で初めてなんか、「あれ?ちょっと感動した!」って思って。しかもそれ初めて観たのが12話ぐらいある内の5話目ぐらいで。たまたまテレビでやってたのを観てたら…なんだろう…もう泣いてましたよね(笑)「いい話!」「切ねーっ!」と思って。たぶん「AIR」からDVD買うみたいなのを始めた気がしますね。

———「この人みたいになりたい」みたいな声優さんとかいたんですか?

佐伯:あー、やっぱり山寺宏一さんはすごいなと思いましたね。純粋に。…でも誰に憧れたんだろう?結局。声優で憧れた人………なんかちょっとでもチヤホヤされたかったんでしょうね、自分が。さびしい奴だったんでしょう、結局。声優界っていうのがその時期ちょうど輝いて見えてた時期だったんです。

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チヤホヤされたくて声優になることを決めた彼はその後、養成所へ通うことになる。

———どこの養成所へ通っていたんですか?

佐伯:東京にある文化放送の養成所で、やっぱラジオも好きだったんで、ラジオの授業もある、でも声優の演技の授業とかアフレコの授業とかもあって。で、土日だったんですよ、授業が。選べるんですけど「いつにしますか?」って。で、土日選んで実家から通ってましたね。富山から。

———えっ!(笑)東京までですか!?

佐伯:東京まで。深夜バスとかで朝着いて授業出て。で、だからビジネスホテルとか泊まって。事務所がやってる養成所が結構多いんですけど、そこに行ったとしても結局その事務所に受かるかどうかは確定じゃない。なんで、とりあえず通おうかなと思って。よくやってたな…事務所受かった後も1ヶ月ぐらいは部屋借りずにその稽古の日だけ来るみたいな。…怖い!今考えると。

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———養成所の授業はどんな内容だったんですか?

佐伯:ラジオは普通にラジオをやるみたいな。「これカフなんで上げたら音出ます」みたいな。で、なんか「メールあるていでしゃべってください」って言われて、メールも用意されてなくて、だから自分で勝手にボケてましたけど。今考えたら無茶苦茶つまんない(笑)

あとはアフレコの授業もあって、アフレコの時って画が出来てないんですよね。教材みたいなので線で描いてあったり丸だけで、左端とか右端に「今この人しゃべってます」だけ出て、それで名前だけパッと出て、パッと消える。それに合わせて台本渡されてアフレコの授業やるっていうのがありましたね。

でも演技の授業もあって、演技の授業はわりと楽しくやってた。日常生活で大声張り上げることなんて無いじゃないですか?マンションだし、家で叫んでもダメだけど、この授業だけならどれだけ叫ぼうが、役にさえ沿ってれば別にそれでいい。だから演技の授業だけはちゃんとやってました。今考えたら声優に大事なのってそっちなんですよ(笑)

アフレコとかは「今声出して、後ろ下がります。こっちのマイク行きます。これやります。この時間内でこのセリフ読みます」。作業が大事なだけで、結局、感情出したり演技の授業のほうが大事で。それを忘れがちですよね。「アニメ好きで声優になりたいです」じゃなくて演技好きじゃないと続かないし、やれない。…今気付きました(笑)そう考えたらやっぱ高校とか演劇部ってあるじゃないですか?それとかやってこないと、急に21、2で演技やり始めようとか…その考え自体が甘いんだろうなと思いました。

マイクの練習とかはやりゃあできるんですよ!でも演技はずっとやって来ないとやれないし、楽しくないと続けらんない。そこですね、一番思ったのは。

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———ほかに声優として必要な条件ってありますか?

佐伯:普通に会話とかできる人(笑)やっぱ普通に会話できるって大事だなって思います、本当に(笑)

———普通に会話できない人が多い?

佐伯:………多いです!(笑)

———あははは(笑)

佐伯:…そんなわけじゃないんですけど、養成所によってあるらしいんです。養成所ってやっぱりいっぱいあって…結局、養成所選びってすごく大事で、ここ踏み外したら…養成所難民っているんです。養成所を転々としてて、別にどこ受かるわけでもなく。35歳くらいでも普通にいますよ。まだ声優目指してます。養成所8校目とか。

———養成所行くのもお金かかりますよね?

佐伯:かかります。相当かかります。1年で…4、50…いやもっと…NSCで40万ですからね。もっとかかる気しますね。それでもしっかりしてる養成所は授業も一週間のうち5日とかがっつりやってます。芝居とかも礼儀もしっかり。でも本当…これ名前出さなくていいですけど「(某養成所)」。これ基本アニメの話ばっかしてる奴の集団です!

———(笑)

佐伯:しっかりしてると言えば、「俳協」っていう山寺さんが元々居た事務所があるんですけど、そこの養成所か、「青二塾」っていう「青二プロダクション」っていう声優事務所がやってる養成所、「どっちか行けばわかるから、やれるかどうか。どっちか行きなさい」って言ってました。聞いた話ですけどね。それこそあんま大小で測れないんです、養成所って。ほんと8校、9校行ってフラフラしてる人によく会いましたね。

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養成所を卒業した彼は、いよいよ声優の扉を開く。

———どういう風にして事務所に受かったんですか?

佐伯:それは文化放送のオーディションみたいなのがあって。演技と…しゃべったり、ナレーションやりますみたいな、それぞれ選んで1人ずつやって。で、僕は2個ぐらいしか受かってなくて、1個は「みんな受かるやつ」みたいな。もう1個も「ほぼ受かるやつ」(笑)まぁ「ほぼ受かる」ほうに行ったんですけど(笑)その事務所に受かった人もいろんな養成所から来てて。受かったの25人ぐらいいて。でも正直、3ヶ月後、いたの僕だけでしたけどね。なぜか辞めて行って…切られて。ほぼ全員切られて。

———受かったのにそこからまた切られるんですか?

佐伯:特種です!うちの行ってた所が。で、俺だけ唯一残った理由が「涙が綺麗だったから」。声関係ない(笑)

———(笑)泣く演技があったんですか?

佐伯:なんか「100万回生きたねこ」っていう絵本を読むみたいな時があって、最初読んだ時に別に心震えてなかったんですけど、先輩が手本として1回読んだんですよ。で、先輩がいい感じになって、その後に「この先輩の演技を受けて佐伯君、ちょっとやってみてくれませんか」みたいになってやったら見事、感情入りまくって泣くっていう(笑)まさかの「ここでホームラン打ったらおもしろい」ってとこで打つっていう(笑)その一発です。

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———事務所にいたときはどんな仕事をしていたんですか?

佐伯:普通はオーディションなんです。オーディションの通知が来て事務所の人が「この人」って選んで「この人オーディションに出します」って。言ったら選抜されないとオーディションも出れないんですけど、僕、力も無いし、特に別に何もやれるわけじゃなかったんで、マネージャーさんが持ってきてくれた仕事を経験させてもらえるみたいな感じで仕事行ってました。でもちゃんとギャラも振り込まれてましたし、ちゃんとした仕事で。何やったかな…有名なパソコンのゲームの声を端役ですけどやったり、ネットの保険会社のナレーションみたいなのをちょろっと読ませてもらうっていうのをやったり、あと…あ!BL小説のラジオドラマの…そのキャストがBL、ボーイズラブですからカップルがいるわけですよ。1組…2組…3組いる中で、唯一俺だけ1人、端役で入ってるっていう(笑)


———(笑)ちなみに声優のギャラってどれくらいなんですか?

佐伯:僕がやった時ですけど、2時間拘束されて8000円とか。でもマイクの前に立ったのは20分とかですね。いや20分経ってないかもしれないです。それこそ部屋入ってマイク調節したり、「声出してみてくださーい。テストでやりまーす」みたいなのがあって。なんで、正味10分で8000円。1万ぐらいのもありましたし。そう考えたらすごいはすごいですけどね。

———仕事は何本くらいあったんですか?

佐伯:それこそ4本ぐらいです。半年ぐらいやって。
生活は全然できてなかったです。サラリーマンで3年間働いてた時の貯金が普通にあったんで、そのお金でやってましたね。

———月収で言ったらどれくらいもらってたんですか?

佐伯:本当、ひと月8000〜9000円ぐらいで、でも普通の人はそれも行かないと思います。仕事がまず無いんで。なかなか難しいですね。本当に稼ごうと思ったら。知り合いでいたのが多分4、50万卒業してからすぐ稼いだ奴いましたけど、だいぶ稀ですね。そいつは出だしのスタート相当いい感じ…で、また仕事あったら経験も積めるじゃないですか。それによって。だからどんどんどんどん上手くなっていくんでしょう。やる気さえあれば。

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———なんか変わった仕事とかありましたか?

佐伯:なぜかアイドルユニット組まされてました(笑)元々あったユニットに加入するっていう。で、ひと月でクビになりました(笑)で、一時期そのユニットをポケモンのサトシ役をやってる松本梨香さんプロデュースにしますみたいな話あったけど、それやるかやらないかぐらいで僕、事務所辞めてるんで、全貌はわかってないです。松本梨香さん、サトシより熱かったですけどね(笑)
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佐伯:サトシも大概熱いですけど、「いや、松本梨香のほうが熱いんかい!!!」って。本当ビックリしました。熱すぎてすぐ芯、揺らぎましたもん。僕に質問してくれるんですけど、返す言葉が…俺に熱いものは別に無いんで。それも一個、辞める要因でしたね。松本梨香さんと喋って自分が揺らぐっていう。やっぱ揺らいだら終わりじゃないですか。そこやっぱありますね、一個原因として。


———では最後に、これから声優を目指す人にメッセージをお願いします。

佐伯:本当に「やりたい!」って気持ちを忘れないでほしい。「やりたい!」って気持ちにしっかりとした理由とか根拠とかあって、一切ブレないっていうのがわかってからスタートしたほうがいいと思いますね。揺らがないこと。揺らがないで始めること。多分いっぱい揺れることはあると思うんですけど、始めてっていろんな人になんか言われたり。「ダメだよ」とか「そういうの良くないよ」とか言われるんですけど、そこでも核さえしっかりしてれば、自分でなんとかできると思うんで。信じて…頑張ってください。

(急にボケっぽいテンションで)君ならなれる!!……よし!………………「君ならなれる!!」はカットしてください(笑)

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一度経験した者にしか味わえない、業界のお話。

いかがでしたか?

これからも色んな業種のアレコレに迫って行きたいと思います。